日記・備考録
Diary/Memorandum

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2006/6/1〜

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2008/5/31

古野電気, GPS定点連続計測 DANA2000
1周波RTK-GPSによる多点連続観測システムはフルノが既に商品化していたのを失念していた。これは火山活動監視等では既に実績がある様だ。確か1ノードの値段を誰かに聞いた覚えがあるのだが、概ね妥当な価格だったはずである。

知っている人にとっては普及型1周波受信機でRTK-GPSが可能なことは当たり前なのかもしれない。それにしては何故何百万もする2周波専用受信機が売れるのだろう。まあ原因は分からないではないのだが、ちょっとあまりに何だよなあとは思う。(一応自分の金を出して2周波専用受信機買っているので、少しは言っても良いだろう。誰かがオオサマのミミはロバのミミと言わなければいけないし。)

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2008/5/30

面白かった、という感想を何人かの方に頂いたので、発表の内容はともかく印象としてはまあ良かったのではないかと思う。 測地観測の面でも観測点コストが下がれば、例えば1km間隔の非常に稠密なGPS受信機クラスタで地域的な地殻変動 を監視するとかの応用は十分可能だろう。まあ私の願いは精密測位技術を一般普及させて色々有益な応用に広範に 使ってもらいたい、という点に有るので、その意図が少しでも伝われば有りがたいことである。

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2008/5/29

高須, 低価格一周波受信機を使ったRTK-GPS性能の評価、課題とその解決策, 日本地球惑星科学連合2008年大会
本日午後の発表資料up。タイトルを見て羊頭狗肉だと言わないように。これでも少しは努力したのだけど。

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2008/5/28

5/26にとった1Hz×7分セッション移動体データの受信衛星とスリップ状況。上:ANN-MS+AEK-4T, 中:ANN-MS+Crescent, 下: GPS-702-GG+OEMV-3。スリップは受信機の出力するロックロスフラグを見ている。赤縦線が通常のスリップ、灰色がhalf-cycleが解けていないエポック。衛星配置に示すように、この時間帯7衛星が高仰角に有って可視条件は良い。u-bloxはhalf-cycleスリップが多い。現行RTKLIBはスリップを検出するとバイアスをリセットしてしまうので、スリップの多い状況で性能を出すのは難しい。多分これらの中で本当にスリップしているのは少ないと思うので、これはスリップ時処理をよりきめ細かく制御すると改善可能だろう。信号が途切れても数秒の場合が多いのでMEMS IMUを使ったスリップ修復も有効なはずである。このケースでは廉価アンテナに起因する性能劣化はあまり効いていない様に見える。1km以内基線、好衛星配置、好上空視界等、かなり条件は付くが廉価1周波受信機による移動体RTK-GPSの実用性はあるかもしれない。



移動体RTK-GPSにおいては搬送波追尾のロバスト性が重要である。特に信号が短時間途切れても整数バイアスの連続性が途切れず、Half cycleも瞬時で解決できることが要求される。このためどうしても受信機の搬送波追尾制御を直接IMU等の外部センサや運動予測アルゴリズムと統合したくなる。基準発振器安定度も重要になるだろう。この点で既存受信機では性能改善に限界がある。ということで次の次位の研究テーマとしてRTK-GPS用ソフトウェア受信機というのは面白いかも知れない。

さて明日の発表資料を作らなければいけないので、プログラムをいじるのはこの位にしておかなければ。

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2008/5/27

電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会 (SANE), 2008/7/25
プログラムがupされた。原稿〆切7/5。

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2008/05/26

移動体データを取ってきた。1 km以内基線でなるべく上空視界の良い条件で、1周波RTK-GPSがどの程度実用的かを検証するため。ローバはANN-MS+AEK-4T, ANN-MS+Crescent。比較のためGPS-702-GG+OEM-Vも一緒に載せた。基準局は例によって屋根上のGPS-702-GG+OEMV-3。SS2も取りたかったのだがWindows VistaでStarViewというログソフトがうまく動作しないためあきらめた。1Hz×7分という短いセッション。アンテナは自動車ルーフに前後60cm位ずつ離して設置した。RTKLIBによるRTK-GPSと同条件の後処理解析結果。左: ANN-MS+AEK-4T, 中: ANN-MS+Cresent, 右: GPS-702-GG+OEMV-3 (L1)。


: Fix解、: Float解

Crescentの性能が良すぎるのだが、他のセッションではもう少し悪くなり、大体OEM-V (L1) とubloxの間位に来る。OEMVの2周波後処理解 (FIX率99.5%) と差を取ってみるとFix解が綺麗に円周上に乗っているのでミスフィックスはない。(左: ANN-MS+AEK-4T, 右: ANN-MS+Crescent) CrescentはFloat解も50cm以内には入っていることが分かる。

安定して上記Crescent位の性能が出れば1周波の移動体RTK-GPSも実用的と言えるかも知れないが、こんな良い条件はそんなにない。

補足: 上記ANN-MS+Cresentの組み合わせではほぼ瞬時FixしFix率も優秀であるが、測位開始時間をずらしながら24H分First Fixの時間を調べた結果では1m基線でも平均10分以上かかっている (これは検定スレッショルドが少し厳しい) 。上記は条件がたまたま良かった可能性も高いし廉価アンテナ+受信機でいつも以上のような性能が出る訳ではない。アンテナ設置状況 (ちなみに車はスバルランカスター) 5/27追記

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2008/05/25

GPS L1 アンテナ・受信機評価
評価結果をまとめた。データ取得中や未取得の欄は今後追加する。

(1) RTK-GPS測位性能、初期化時間評価にはRTKLIB ver.2.1を、それ以外の評価にはスクラッチで開発したMatlabベースのアンテナ・受信機特性解析ソフトウェア (名称未定) を利用した。
(2) EVK-5H (F/W ver.3.00) の搬送波位相観測値がおかしい原因は不明だがu-blox 5のF/Wにバグが残っている可能性が高いと思う。生観測データ出力はunofficialな機能なのでこれはどうしようもない。
(3) 7 km基線RTK-GPS性能は近隣電子基準点との基線による評価結果だが日付が異なるので大気状態差が現れており、必ずしもアンテナ・受信機性能の差のみを表している訳ではないことに注意。
(4) RTK-GPS初期化時間を見るとSS2やCrescentよりu-blox AEK-4Tの方がRTK-GPSに向いていることが分かる。初期化時間にはコードマルチパス性能が大きく効くのでそれが優秀だということではないかと思う。初期化時間に関しては1周波と2周波では圧倒的な性能差があるので、今のところ移動体RTK-GPSには2周波受信機が必須と考えて良い。これを改善するアイデアはあるが、連合大会に間に合うかどうかは微妙である。実は木曜の発表資料はまだ白紙である。

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2008/05/24

覚書。屋根上ターゲットアンテナARP (アンテナポール上端中央) 位置 。近隣電子基準点 (2008/5/1 F2解固定) 24Hスタティック基線解。仰角マスク10度。
35.872980448 138.389665832 1003.7116 (基準点: 0263 小淵沢 6.9km)

35.872980493 138.389665803 1003.6997 (基準点: 0979 山梨高根 6.1km)
上下が1cm強ずれている。これは少し大きい気がする。

覚書。スカイプロット。左: 屋根上, 中: 0263, 右: 0979。近隣電子基準点の上空視界はあんまり良くない。

覚書。アンテナ評価用マウント: 位置関係

覚書。GT PPPによるターゲットアンテナ位置推定結果。
35.872980785 138.389665924 1003.8528 (24H Static PPP with IGS Final)
上記電子基準点基線解比較でE: 0.83cm, N: 3.73cm, U: 14.12cm。これは位相中心。位相中心オフセット: L1:E:0.03cm N:0.14cm U:6.68cm、L2:0.01cm N:0.00cm U:6.61cm (igs05.atx, NOV702GG) を加味しても南北4cm弱、上下7cm強の差がある。これはちょっと誤差が大きすぎる。何が問題だろう。

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今回、一周波RTK-GPSの評価用にアンテナ特性解析ソフトを開発した訳だが、搬送波マルチパスが本当にちゃんと推定できているか検証するのは結構大変である。ただこれは数日分の解析結果を1恒星日ずらしてスタックして見ると概ね確認することができる。以下は5/13〜5/15のPRN16 搬送波マルチパス。アンテナはANN-MS、 受信機はAEK-4T。受信機雑音を削減するため少しフィルタをかけている。搬送波マルチパスは時定数数10分 1〜数cmの変動と数分周期 数mmの変動が合成されていることが分かる。なかなか面白い結果ではないだろうか。



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2008/05/23

Garmin GPS 15Lのバイナリデータをシリアルで取り込む際に高頻度で文字化けする現象が取れずに時間切れ。USB-シリアル変換アダプタの問題の可能性もある。原因調査の時間がないのでGarminは後回し。ちょっとバイナリを見た範囲ではクロックドリフトや時刻オフセットも大きいし、ephemerisは取り出せないし、RTK-GPSにまともに使えそうな気がしない。まあ$60のモジュールなのでSS2やCrescentと比較してもかなり安っぽい作りである。やはりこのクラスはRTK-GPSに使うのはちょっと無理そう。
Trimbleが新しく出したCopernicus II モジュールが良さそうだなあ、と思って調べてみたのだが、これはバイナリ出力には対応しているが、疑似距離だけで搬送波位相が出ない様だ。ちょっと残念。

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2008/05/22

色々補正をしてやっとSS2 (SuperStar II) で疑似距離と搬送波位相のcoherencyがとれる様になった。位相観測値がcoherentでなくても相対測位には影響ないのだけど、キャリアスムージングが出来ないし、コードマルチパス推定も難しくなるので色々と困る。SS2とCrescentのバイナリ-RINEXコンバータが出来たので、KGPS測位性能を測る。左: NovAtel SS2, 右: Hemisphere Crescent。アンテナはGPS-702-GG。1m基線、一周波。基準局はGPS-702-GG/OEM-V。OEM-Vと比較してみるとやはり搬送波追尾雑音や搬送波マルチパスに関しては、測量級受信機も廉価受信機も差はないことが分かる。(SS2もCrescentもホントの意味で廉価受信機かと言えるかとなると微妙だが)。あとGarmin GPS 15Lも評価したいのだが間に合うかどうか。

さて、ここまで評価した範囲で1周波RTK-GPS用お勧め構成を考えてみる。

まず測量級アンテナと廉価アンテナの差は大きい。GPS-702の1周波版が$600位なのでこれを推奨。TrimbleのBullet ($120位) が良いとの情報があったのでこれは今後評価予定。
アンテナに比較すると測量級受信機と廉価受信機の差は少ない。Crescentは性能は問題ないし設計も新しい。ただ1Hz出力で約$300は少し高い。高レートオプションを付けると1周波測量級受信機と差が無くなる。u-blox (Antaris 4) は僅かに性能が落ちる感じだが10Hz可で約$200。まあ目的に応じてどちらかを選べばよい。SS2はあまりに設計が古い。u-blox 5 (v.3.00) は今のところまともなKGPS解が得られない (多分F/Wバグ)。Garminはまだちゃんと評価していないがHalf cycle ambiguityの問題が残っているのでRTK-GPSには使いにくい。なお当たり前だが廉価受信機には普通RTK-GPSのF/Wは含まれていないので (Crescentにはオプションがある) これは外部処理する必要がある。廉価1周波受信機用RTK-GPSアダプタを$500位で出せば売れるかもしれない。

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2008/05/21

京都大学防災研究所他, 高サンプリングGPSで捉えた2008年5月12日中国・四川省の地震波形 (第1報)
1Hz キネマティックPPPで捉えた四川大地震の地震波。解析にはGT0.6.3を使用し1Hz衛星時計を推定している。かなり大きな地震だったので東西5-6cmの表面波が認められるが、特に上下成分に雑音が多く解析手法として課題が残っている。PPPで整数バイアスが解けるようになると東西方向の雑音はもう少し削減できると思う。

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SuperStar IIの受信機バイナリ変換で嵌る。問題は色々あるのだが、バイナリ形式設計が悪いのとF/Wがアホで内部計測値をそのまま出力するので補正しないとちゃんとした観測値にならない。補正方法がマニュアルに書かれているのだが、誤植が多いし難解で何度読み返しても内容が理解できない。多分設計が古すぎるのだろう。それに比べると設計の新しいubloxやHemisphereは大変素直な実装である。

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2008/05/20

J.Ray et al., Overview of IGS Products & Analysis Center Modeling, IGS 2008 Workshop, 2008
来月行われるIGS AC Workshopの資料がupされている。IGS 各解析センタで使われている解析モデルが一覧表でまとめられており分かりやすい。

せっかくなのでこの表に合わせてGTの解析モデルを以下にまとめておく。といってもルーチン解析を行っている訳ではないので3年前にGPS衛星軌道/時計決定を行った際のGT0.5.5の設定である。さすがに最新の解析戦略に比較すると古さは隠しきれない。(なおGT0.5.5からGT0.6.3へのモデル改良は、GMFやANTEXアンテナモデルを入れたくらいで、たいした差はない)

DATA USAGE
ANALYSIS
CENTER
OBS TYPE ORBIT DATA
ARC LENGTH
DATA
RATE
ELEVATION
CUTOFF
ELEVATION
INVERSE WGTS
GT0.5.5 UnDiff 24+24+24h 5 min 10 deg σ2*(1+f (1/sin2(e)-1))
TIDAL MODELS
ANALYSIS
CENTER
SOLID
EARTH
EARTH
POLE
OCEAN
LOAD
OCEAN
POLE
OCEAN
CMC
SUBDAILY
EOPs
GT0.5.5 IERS 1996 IERS 1996 NAO.99b w/
11 terms
none ? IERS 1996
GRAVITY FORCE MODELS
ANALYSIS
CENTER
GRAVITY
FIELD
EARH
TIDES
EARTH
POLE
OCEAN
TIDES
OCEAN
POLE
RELATIVITY
EFFECTS
GT0.5.5 JGM3; C21/S21
due to PM
IERS 1996 IERS 1996 CSR 2.0 none no dynamic corr;
bending applied?
SATELLITE DYNAMICS
ANALYSIS
CENTER
NUTATION
& EOPs
SRP
PARAMS
VELOCITY
BRKs
ATTITUDE SHADOW
ZONES
EARTH
ALBEDO
GT0.5.5 IAU1980; BuB
ERPs
D, Y, B, Z
scales
none none E: umbra & penumbra
M: umbra
none
TROPOSPHERE MODELS
ANALYSIS
CENTER
METEO
DATA
ZENITH
DELAY
MAPPING
FNCT
GRAD
MODEL
ZENITH
PARAMS
GRAD
PARAMS
GT0.5.5 none Saastamoinen
dry
NMF
dry + wet
none 5-min
stochastic ZTD
5-min
stochastic

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2008/05/19

日本地球惑星科学連合2008年大会, D106 測地学一般
連合大会の予稿集が公開された。GT0.6.3を使った有益な成果をいくつか発表していただけるようで有り難いことである。GT0.6.4へのバージョンアップと同時にGT紹介論文をちゃんとした論文誌に投稿したい。最近GTに関して外国から問い合わせが来る様になってきたのでdocumentの英語化もしたいなあ。

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久しぶりにGTのサポート情報更新。なるべく早く対応すべき課題がたまってきたので、夏ぐらいまでにマイナバージョンアップ (ver.0.6.4) の予定。

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連合大会向け廉価一周波受信機評価続き。ハーフピッチコネクタが手に入らないのでHemisphere Crescent受信機に直接ハンダ付し空中配線でUSB-シリアルアダプタに繋いでデータ取得。余裕ができたら各受信機をちゃんとケースに入れてあげたい。あと受信機バイナリ変換コードをシコシコと書く。

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2008/05/17

ニコン・トリンブル, GPSアンテナ設計と性能の進歩: Trimble Zephayr
TrimbleのZephayrアンテナの宣伝資料なのだが、高性能測量級アンテナの特性について分かりやすい解説が含まれている。これを見る限り、チョークリングアンテナとの比較で、位相中心安定性と衛星捕捉性能の点ではZephayrアンテナが、マルチパス特性ではチョークリングアンテナが優れていることが分かる。さてNovAtel GPS-702-GGアンテナであるが、似たような条件の計測で疑似距離マルチパスが0.27m (L1)、基線解標準偏差がE 0.26cm, N 0.36cm, U 0.77cmであり、Trimble Zephayr/Zephayr Geodeticアンテナと殆ど同等の性能を有していることが確認できる。
なおチョークリングアンテナは基準局用固定アンテナとしては優秀だが、一般に仰角に依存して位相中心が動くし、L1/L2間差も大きいので、アンテナがティルトする可能性がある移動体では補正のためどうしても姿勢計測が必要になり使いにくい。この点GPS-702-GGやZephayrの様な"zero-offset"型アンテナは姿勢計測の必要がないのは大きなメリットとなる。

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2008/05/16

新しいCODE 5sクロックを試してみた。2008/4/27 6:00-9:00 IGS USUD局データを使ったGT0.6.3による1HzキネマティックPPP結果。左: CODE 5sクロック、右: IGS 30sクロック。補間誤差に起因する高周波雑音の点で差がないことは無いのだけど、それ以外の雑音成分が結構大きいので結局5sクロックの有効性がどれ程あるかはちょっと微妙なところである。

なおGT0.6.3でCODE 5sクロックやIGS 30sクロックを1Hz PPPに使うためには、クロックファイル名をCOD14770.CLK_05S → COD14770.CLK、igs14770.clk_30s → igs14770.clkの様にリネームしてから、"Estimated/Fixed Parameter"設定で使用クロックとしてCODEまたはIGS Finalを指定し、Interp Clock=ONとして下さい。

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2008/05/15

S.Schaer, [IGSMAIL-5771]: Model change made at CODE, 14 May 2008
CODEの解析用計算機更新とそれに伴う解析戦略の変更通知。プロダクトとして5s間隔の高速衛星時計推定値 が追加されたようだ。このCODE 5sクロックを使えば時計補間誤差をほぼ無視できるはずであり、キネマテ ィックPPPによる高速変動計測の応用がより進むと思われる。まあ遅すぎたくらいと思わないこともない。 1日分の圧縮ファイルで6MB強、解凍済で35MBもあるので取り扱いがちょっとやっかい。RINEX CLK EXT形式 は高速時計用にはあまりに格納効率が悪いので適当なバイナリ形式で提供してくれると良いのだが。

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2008/05/14

M.Ge et al., Resolution of GPS carrier-phase ambiguity in precise point positioning, EGU Assembly, 2007
11/2に紹介したPPP AR研究の発表資料。こちらの方が論文より分かりやすい。推定UPD (Uncaliblated Phase Delay) を使ったPPP精度評価結果がある。24H PPP解でE-W Repeatabilityが30%改善、1H PPP解で精度がRMS 4-6cm→1cmに大幅に改善されている。ナローレーンUPDが数cmオーダーで時間変動しているのだがこれはIGS軌道・時計誤差のせいかもしれないとしている。

現行IGS Finalは、24HスタティックPPP用には概ね十分な品質を持っていると言えるが、短セッションPPP、ましてやキネマティック PPP用には必ずしも十分な品質を持っているとは言えない。特に衛星時計はまだ色々な問題、例えばday boundary不連続、食衛星の品質、推定値欠損等、を抱えている。特にキネマティックPPP用として2006/12に提供開始したIGS 30s衛星時計はまだ品質問題が多い様で、いまのところキネマティックPPP用にはCODEを使った方が良いと思う。参考までに30s時計品質を解析した結果を貼っておく。GT0.6.3とIGS, CODE, NRCan, MITの30s時計を使って30s間隔24H PPP残差を出力させた。データは2008/3/30のTKSB。IGS 30s (左上)、CODE (右上)、NRCan (左中)、MIT (右中)。軌道はIGS及び各AC解を使用し、全衛星分残差をスタックしている。MIT暦の品質が酷い。一番下はIGS 30s PRN26のみの残差拡大図。300s間隔値とその他に数cm程度の不整合が生じていることが分かる。多分最終時計解の併合アルゴリズムに問題が残っているのではないかと思う。なお理由は良く知らないが、JPLは現在既に30s時計の提供を停止している。




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2008/05/13

昨日upしたアンテナ特性解析結果を再度チェックしているのだが、異常データに引っ張られて異常値が現れているらしい結果がいくつかで見られる。もう少しQCをちゃんと入れた方が良いかもしれない。特にL1アンテナでのスリップ検出は結構悩ましいところで、今は受信機のロックフラグ (LLI) を見ているだけだが、受信機によってはこれはあまり信頼性が高くない。もっとよい手法があれば良いのだが。なおNovAtelは時計を連続的にステアリングするタイプの受信機なので受信機時計のランダム変動成分が大きく時間差を使う解析では使いにくい。定期的に時計が飛ぶ受信機はそれでまた別の問題がある訳だがこの点では使いやすくスリップ検出も容易である。本格的な解析にはルビジウムが欲しい所である。
ところで最近はオーディオ用マスタークロックにOCXOや原子時計を使うことが有るようで、高級オーディオ用ルビジウム基準信号発信器も発売されている。ネット検索するとウン千万のセシウム原子時計を使ったら凄い音が聞こえたとかいう感想が載っていたりする。オーディオマニアは本当に10^-11とかの差が聞き分けられるのだろうか。ちょっと信じられない。音に効くはずの短期変動はセシウムよりルビジウムの方が良いはずではないか、とも思ったりする。まあウン10万のケーブルをとっかえひっかえして悦に入る様な人たちが沢山いるオーディオマニアの世界は殆ど宗教みたいなものである。

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2008/05/12

GPS L1アンテナ・受信機評価 (Draft)

とりあえず廉価一周波RTK-GPSの基礎データとしてアンテナの評価結果をまとめた。まだ今後色々と更新する予定。

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アンテナ特性解析続き。やっとアンテナ位相中心変動 (PCV) が推定出来るようになった。小型パッチu-blox ANN-MS (左)とNovAtel GPS-702-GG (左) のPCV推定値。基準アンテナもGPS-702-GG。5/7に書いたように主な測量用アンテナの絶対検定値は入手できるので個体差や環境差を無視すればそれらアンテナ基準で絶対値を求めることができる。基線解析でいったん位相中心を決定してから、位相中心を固定して再度カルマンフィルタで位相中心変動量を球面調和関数係数として求めている。次数はアンテナ検定で標準的に使われる10階5次とした。24H分の実観測データを使っているので北側のデータ欠損域の値が正常に求められない。アンテナを180度水平回転して取得した観測データも使えば改善されるはずだがちょっと時間がないのでこれはあきらめる。Berneseを使えば容易に推定できるはずであるがマルチパスも同時に求めたいこともあり結局解析プログラムをスクラッチで書いてしまった。

確かに廉価アンテナの位相中心特性は悪いわけだが、思っていたほど悪いわけではない。コードマルチパス耐性が大きく方位角依存性の小さいアンテナを選定すればRTK-GPSにも使えないことはないのではないかと思う。

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2008/05/11

高須他, 移動体向け広域型ネットワークRTKシステムの検討, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会 (SANE) (発表申込), 2008
広域ネットワークRTK関連発表申込み。とりあえずこれは机上検討のみ。内容を進めて11月の宇宙科学連合講演会にも申し込むつもり (多分準天頂衛星セッション) 。

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2008/05/10

アンテナ特性の解析。連合大会向け。小型パッチu-blox ANN-MS (左) とNovAtel GPS-702-GG (右) の比較。24H分の実観測データから抽出している。上がコードマルチパス、下が搬送波位相マルチパス。搬送波位相マルチパスは基準局アンテナ (GPS-702-GG) 相対値で、基線解析残差なので受信機雑音も加算された値である。受信機は全てNovAtel OEM-V。ANN-MSは21cmΦのグランドプレーン付。


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Wired Vision, 2008年稼働を目指す欧州版GPS「ガリレオ」、今後の課題は, 2004/6/22
随分古いGalileoの記事を見つけたので貼っておく。現在は状況が変わっている部分が多いので注意。「PRSはGPSとはまったく別の周波数帯に移されることになった。」とある。ちょっと調べてみるとPRSはGalileo E1-AとE6-A帯で提供されるらしい。Galileo E1-A帯とGPS M-Codeは周波数スペクトラムがオーバラップしているので、もしかするとまだ最終調整がついていないのかもしれない。Gailileo PRSについて興味が出てきたのでちょっと検索。

A.Kendall et al., Say "Hello" to Galileo's PRS, Inside GNSS, 2007
なぜPRSが必要かの良い解説。これを読むと衛星測位技術を握ることがもはや安全保障の首根っこを押さえることになっている現実に気付く。そしてEUが、ビジネスとしては成立しなくても、巨額な予算を使ってGailieo計画を推進しようとしている意図が理解できる。

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2008/05/07

今RTK評価用の基準アンテナとして使っているNovAtel GPS-702-GGは位相中心変動 (PCV) の面からは優秀なアンテナである。PCVグラフが描けるようになったのでGPS-702-GG (左)と標準的なチョークリング型アンテナ (右) との比較を以下に示しておく。PCVデータは最新のIGS絶対アンテナモデル (igs05_1473.atx) から取った。

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2008/05/03

T.Hobiger et al., Ray-traced troposphere slant delays for precise point positioning, Earth Planets Space, 2008
気象庁数値予報モデルとレイトレーシングにより算出した対流圏遅延によるPPP測位精度の評価。レイトレーシングにはNICTで開発したKARATと呼ぶツールを、PPPにはGT0.6.3を利用している。 KARAT+対流圏residual推定の条件で、数値予報モデルを使わない標準的PPPと比較して若干のrepeatability改善が見られたとしている。前に少し書いたが、現行の気象庁数値予報モデルにはまだGEONET可降水量が統合されていないので水蒸気量観測データのソースが豊富な訳ではない。従って数値予報モデルのみではむしろ精度が落ちる結果になっているが、これは今後改善されるはずである。数値予報モデルの導入はキネマティックPPP条件でより効果的に働くのではないかと思う

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N.A.Carlson, Federated square root filter for decentralized parallel processors, Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on, 1990
Google Scholarで180以上引用が付いているので、Federated Kalman Filterに関するオリジナル論文の様。$35也。Kalman Filterも拡張が色々とあって正直何がなんだかよく分からない。ちょっと目的は違うが最近だとUnscented Kalman FilterとかParticle FilterとかはGPSの世界でも結構 (研究レベルでは) 使われているようだ。Kalman Filterの基礎から最近の各種拡張まで一覧でまとまっている良い解説書はないだろうか。

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G.Wubbena et al., RTK Networks based on Geo++ GNSMART - Concepts, Implementation, Results, ION GPS 2001
G.Wubbena et al., PPP-RTK: Precise Point Positioning Using State-Space Representation in RTK Network, ION GNSS 2005
ここのところTrimble社関連の論文しか取り上げていないので一応Geo++社のネットワークRTK関連の論文リンクを貼っておく。多分両者とも既に貼っているはず。上はGeo++ GNSMARTの処理手法、下はSSRを使った広域ネットワークRTK (というかAR付リアルタイムPPP) のコンセプト提案、両者とも技術的詳細は少なく内容はよく分からない点が多い。

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2008/05/02

4/29にTrimble GPSNetで採用されているネットワークRTK補正情報生成に関する論文を取り上げたが、再度少し細かく読んでみた。

まずVollath (2004) では"FAMCAR"と呼ぶ分割フィルタ手法について述べている。論文そのものはUS Pat. Appのサマリという感じで詳細は良く分からないので細かくはUS Pat. Appを読めばよい。
Landau (2007) ではGPSNet v.2.5で採用されたFAMCARの計算効率化について述べている。この論文によると、FAMCARのGeometry Filterは基準局数が多くなると計算量が急激に増大するため前版のGPSNetで同時処理可能な基準局数は最大50局に制限されていた。従って50局より大きな基準局網ではサブネットワークに分割して処理する必要があった。この問題に対応し計算量を削減するためGPSNet v2.5から"Federated Geometry Filter"という手法が取り入れられた。この手法では単一のGeometry Filterの代わりに、単一のFrame Filterと局毎の複数のGeometry Filterに分割して処理する。Frame Filterでは基準局網のサブセットを使って衛星軌道誤差パラメータ (書いていないが多分時計も) を推定しその結果を局毎のGeometry Filterに適用する。この手法により、100局1日分の基準局データ処理時間が3581分から57分に短縮され、利用者測位精度や初期化時間はほとんと劣化しない、としている。Landau (2007) 後半ではネットワーク補正の品質情報を測位に利用することにより測位性能を改善する手法について述べている。
衛星軌道・時計は全基準局を使わなくても推定条件は悪くならないはずなので計算量削減としては妥当な手法だろう。この論文を読む限り、既にGPSNet v.2.5では300局の基準局データの一括処理も可能なのかもしれない。

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〜2008/04/30


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