GPSによる精密単独測位(PPP)法の精度評価
Evaluation of GPS Precise Point Positioning (PPP) Accuracy
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Abstract

Precise Point Positioning (PPP) is an independent precise positioning scheme using GPS precise orbit/clock ephemerides and carrier-phase observables without reference stations. This paper introduces the PPP measurement model and the estimation strategy. After that, we report evaluation results of PPP accuracy using GPS precise analysis software GPS Tools (GT), that we are currently developing. At first, IGS reference frame stations' positions were determined using GT PPP and compared with the coordinates according to International Terrestrial Reference Frame (ITRF). There was apparent 1.5-2 cm range vertical error in PPP results. With this error correction, PPP is able to archive the accuracy of 3 mm horizontally and 8 mm vertically.

精密単独測位(PPP)法はGPS精密衛星軌道、時計及び搬送波位相観測値を使用し、基準点なしに独立に精密測位を行う手法である。本論文ではPPPに関する観測モデル及び推定手法を紹介した後、開発中のGPS精密解析ソフトウェアGpsToolsを使って実際にPPPにより測位を行いその精度を評価した結果を報告する。まず最初にIGS (International GPS Service) の基準座標局の座標をPPP測位により決定し、世界測地基準座標系(ITRF)に準拠した座標と比較することにより誤差やRepeatabilityを評価した。その結果主に垂直方向に1.5〜2cmの系統誤差が見られためその補正法につき検討し補正を行うことにより概ねグローバルな座標を水平3mm、垂直8mm程度の精度で決定できることが分かった。次に相対測位法との差を見るため国土地理院電子基準点の座標をPPP測位により決定し相対測位法で決定されている国土地理院F2解と比較した。その結果水平方向に明らかな系統誤差が見られることが分かった。これらの誤差の原因の詳細は不明だがPPPと相対測位法の測位法の違いに起因する可能性が高い。

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高須知二, 笠井晶二, GPSによる精密単独測位(PPP)法の精度評価, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会 (SANE), 2005 (PDF: 516KB) (公開終了)
Evaluation of GPS Precise Point Positioning (PPP) Accuracy

高須知二, 笠井晶二, GPSによる精密単独測位(PPP)法の精度評価, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会 (SANE), 2005 (発表資料) (PowerPoint: 4.8MB)
Evaluation of GPS Precise Point Positioning (PPP) Accuracy


PPPによるIGS基準座標局の座標決定
Determination of IGS Reference Stations' Coordinates by PPP

IGSではITRF2000測地基準座標系に準拠したGPS観測による基準座標系を構築しており最新のものはIGb00と呼ばれる。それらの座標の長期安定度は他の宇宙測地技術との比較から1mm以下と言われている。
今回この基準座標系を構成するGPS観測局から78局を選びPPPにより測位を行いIGb00座標との比較によりその精度評価を行った。PPP測位にあたって衛星軌道及び時計としてはIGS最終暦を使用した。軌道に関してはIGS精密暦による15分間隔の衛星位置を衛星精密運動モデルを使って5分間隔に補間した値を用いた。観測局座標初期値は擬似距離観測値を使った単独測位により求め、初期値各座標成分の標準偏差は100mとした。

以下にPPP測位結果をIGb00座標と比較した誤差を示す。また観測局位置及びPPP測位誤差平均の水平成分、垂直成分を図に示す。PPP測位結果には図1下段に見られるように垂直方向に−1.5〜−2cmの明らかな系統誤差が認められる。
これらの系統誤差を補正するために一般に行われているのは7パラメータを使ったHelmert変換により推定座標を世界測地基準座標(ITRF)にFittingすることによりこれらの系統誤差を吸収する手法である。この手法は垂直方向の系統誤差だけでなく同時に衛星軌道に含まれる地球中心オフセット及び地球回転パラメータ誤差を吸収する効果も併せ持つ。
座標補正を行った後のPPP測位誤差を以下に示す。概ね水平方向RMS誤差で3cm強、垂直方向RMS誤差で8mmの精度が得られることが分かった。

IGS基準座標局PPP測位誤差
RMS誤差 Repeatability
East North Up East North Up
座標補正無 3.9mm 3.3mm 17.2mm 2.4mm 1.6mm 4.9mm
座標補正有 3.5mm 3.2mm 8.1mm 2.1mm 1.5mm 4.7mm
(GPS Week 1291, IGb00比較)


IGS座標基準局PPP測位誤差(IGb00比較, 座標補正無, 上:水平,下:垂直)



IGS座標基準局PPP測位誤差(IGb00比較, 座標補正有, 上:水平,下:垂直)


PPPによる電子基準点座標の決定
Determination of GEONET Stations' Coordinates by PPP

PPPと相対測位の比較のために国土地理院電子基準点網(GEONET)の観測データを使用しPPP測位を行って評価した。
電子基準点は観測データが公開さているだけでなく国土地理院が相対測位法により決定した電子基準点座標値が公開されている。これらの座標値のうち最も精度が良いと考えられるのはF2解と呼ばれる最終座標推定値である。F2解は精密基線解析ソフトウェアBerneseを使って相対測位法により1日に一回座標値を決定している。解析に使用している精密暦はIGS最終暦であり全局をいくつかのクラスタに分割しクラスタ毎に各局の座標を求めている。絶対座標を決めるため電子基準点のうち1局(つくば1局)を固定局としており決定座標はITRF2000に準拠しているとしている。
以下に国土地理院F2解と比較したPPP測位誤差を示す。また地図上に平均誤差水平成分をプロットしたものを図に示す。
図から明らかなようにPPP測位解と相対測位法で求めた国土地理院F2解とは日本列島の端近くで最大2cmに及ぶ系統誤差が見られる。また良く見ると同じ様な誤差傾向を示す局のグループが見られる。
前項で評価したようにGT PPPは世界測地基準座標系ITRF2000に対し水平3mm,垂直8mm程度の精度を持っていると考えられるため、これらの系統誤差はPPPと相対測位法の測位法の差に起因するものである可能性が高いが詳細な原因は不明である。

国土地理院電子基準点PPP測位誤差(座標補正有)
RMS誤差 Repeatability
East North Up East North Up
6.4mm 5.0mm 11.9mm 2.2mm 1.9mm 4.3mm
(GPS Week 1291, 国土地理院F2解比較)


電子基準点PPP測位誤差(国土地理院F2解比較, 座標補正有, 上:水平,下:垂直)

(以上の解析には国土地理院電子基準点データを使用しました)