日記・備考録 |
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10/3にNovAtel受信機の再捕捉性能の話を書いたが、よく調べると受信機そのものは再捕捉直後から観測値を出力している様だ。ただConvert4によるRINEX変換時に追尾ステータスがstableにならないと観測値をRINEXに出力しないらしい。マニュアルではhalf-cycle ambiguity解決前の搬送波位相も出力している様に読める。ということで受信機の全機能をちゃんと使おうとしたらRINEXではダメで、受信機バイナリを直接取り扱わなければいけない。希望は出てきたが、NovAtelバイナリ用コードも書かなければいけない。
とりあえずGPSシンポの原稿一本仕上げた。でもまだ一本残っている。
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10/27に書いた固定点測位解精度評価の件、SNRマスクを追加するとublox MSAS解精度が随分良くなることが判ったので、その解に置き換え。どうも北東低仰角の屋根反射によるマルチパスがかなり悪さをしている様で、ubloxの場合SNRマスク (>35dBHz) でその観測をカットすると明らかに精度改善する。(2drms 1.68m→1.45m) その点NovAtel解は殆ど変化がない。アンテナは同じなのでやはり受信機のマルチパス耐性に随分と差があることが分かる。
一太郎のバッファオーバフローに起因する脆弱性が問題になっている。最近ワープロソフト全然買っていないなあ、と思って調べると、一太郎はver.10、wordはword98から更新してない。TEXも勧められているのだけど、困ってないから当分今のままでいいや。あと最近書いているプログラムはsprintf() 使いまくりなので最新のVisual Studioでコンパイルしようとすると大量に警告が出る。_CRT_SECURE_NO_DEPRECATEマクロで抑制してしまっているのだけど、ホントはちゃんと対策した方が良いかなあ。
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覚書。NovAtel受信機付属RINEX変換ユーティリティConvert4のバグ。RINEX NAVファイル、週替り時のgps week # のhandover不正。gps week # (6行3項) は1451が正しい。RINEX仕様ではtoe (4行1項) と整合させなければいけない。自作ublox-RINEXコンバータのバグを調べていて見つけた。なおIGS brdc、電子基準点RINEX NAVファイル共にこの問題はない様だ。
30 07 10 28 00 00 00.0 .504213385284D-04 .125055521494D-11 .000000000000D+00 .300000000000D+02 .198750000000D+02 .532915055194D-08 .473355396421D+00 .912696123123D-06 .103328933474D-01 .589527189732D-05 .515369708443D+04 .000000000000D+00 -.121071934700D-06 .146659888356D+01 .242143869400D-07 .946699175809D+00 .259437500000D+03 .136492701478D+01 -.855392773400D-08 .368229623956D-09 .100000000000D+01 .145000000000D+04 .000000000000D+00 .100000000000D+01 .000000000000D+00 -.745058059692D-08 .300000000000D+02 .604776000000D+06 .000000000000D+00
GPSの元の仕様が悪いと思うのだが、week handover部分はとってもバグりやすそうな部分ではある。日本で日曜の朝9時頃だけおかしな動作をする受信機が有ったらまずF/Wのバグを疑った方が良いかもしれない。
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快晴。赤岳(N)、金峰山(E)、富士山(S)、甲斐駒(W)、皆白くなっている。いつの間にこんな季節になった。
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ここのところ、MSAS補正の実装と評価をやっている訳だが、今のところMSAS評価そのものをどこかで発表する予定はないので少しその結果を整理しておく。
(1) 良い条件でMSASの有効性は明らか。精密測位用受信機で
(水平) 2drms 0.85m, 垂直RMS 0.65m、廉価受信機で2drms
1.46m, 垂直RMS 1.23mの精度が出ている (下記参照)
。(補足: 2drmsを計算していなかったので表に追加。ちゃんとした計算はE/Nの相関も考慮しなけばいけなかった。しかし2drmsって誤用の多い性能指標なのでその都度どうやって計算したかを確認した方がよい。16:39追記)
(2) 現行のublox受信機 (AEK-4T) NMEA解ではMSAS補正がうまく働かない。これは受信機F/Wの問題の可能性が高い。またロスト後のMSAS再捕捉が遅い場合がある等、移動体利用には幾つか問題が残っている。
(3) 電離層擾乱時、日本列島端では原理的に精度が落ちるはずであり、今後評価が必要。
(MSAS解に関しSNR Mask=35dBHzを追加した結果に置き換えた。10/30追記)
Condition | Mean Error (m) *1 | RMS Error (m) *1 | 2drms *1 Error (m) | Results | |||||
Receiver | Solution | E-W | N-S | U-D | E-W | N-S | U-D | ||
NovAtel OEM-V-3 *2 |
MSAS *3 | -0.063 | -0.006 | 0.133 | 0.254 | 0.340 | 0.649 | 0.849 | Graph |
KGPS *4 | -0.005 | -0.006 | 0.010 | 0.009 | 0.013 | 0.030 | 0.032 | Graph | |
DGPS *5 | -0.065 | -0.019 | -0.288 | 0.251 | 0.311 | 0.708 | 0.799 | Graph | |
Single Point *3 | -0.121 | 0.555 | -2.823 | 1.021 | 1.161 | 3.917 | 3.092 | Graph | |
Receiver NMEA *6 | -0.059 | 0.067 | -1.244 | 0.750 | 0.824 | 2.510 | 2.228 | Graph | |
ublox AEK-4T *2 |
MSAS *3 | -0.064 | -0.010 | 0.483 | 0.431 | 0.585 | 1.230 | 1.454 | Graph |
KGPS *4 | -0.006 | -0.006 | 0.010 | 0.009 | 0.013 | 0.030 | 0.031 | Graph | |
DGPS *5 | 0.064 | -0.016 | 0.041 | 0.427 | 0.570 | 1.210 | 1.424 | Graph | |
Single Point *3 | -0.111 | 0.577 | -2.548 | 1.075 | 1.309 | 3.942 | 3.388 | Graph | |
Receiver NMEA *7 | -0.318 | 0.046 | 0.385 | 1.105 | 1.688 | 2.440 | 4.035 | Graph |
参考のためENRIが公開している後処理用GPSディファレンシャル補正データを使ったNovAtel DGPS解 (RTKLIB v.2.1)。疑似距離観測値のみでこれくらい精度がでればSBAS方式としてはほぼ限界に近いだろう。(この位の精度になってくるとSBAS規格の補正値分解能の制約も出てくる)
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Spaceflight Now, Russia's Proton rocket roars back into action, Oct 26, 2007
Russian Space Agency Information-Analytical
Center News, 26.10.2007 (Google Translate to english)
2007/07:35UTC ロシアProtonロケットによる3機のGLONASS衛星打ち上げ成功。GLONASSは3プレーン各8機、計24機でFOCとなるが、今のところ13機が有効 (うち3機保守停止中)。打ち上げられた衛星は2世代の衛星で運用寿命はそれぞれ3年、7年としている。
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MSAS付き移動体 (自動車) で取ったデータの解析。10/20にMSASは移動体に結構使えるのでは、と書いてしまったが、実際のデータを解析してみるとちょっと微妙。問題は移動体ではMSASの信号が安定して受からないのである。特にubloxはどうもMSASをロストしてから再捕捉に時間がかかる。ロストすると補正情報が更新されないから補正値が古くなって使えなくなってしまう。後処理なら、別途固定点で取ったメッセージを使えばよいが、それならむしろ近くの電子基準点とのDGPSの方が条件が良い。ということで、良い条件なら結構使えるのでは、に変更。NovAtelは再捕捉の問題はあまりなさそうなので廉価受信機のF/Wにもう少し頑張ってもらわないといけない。
移動体RTKにしても、実は無線通信リンクの安定性の問題まできちんと突っ込んでシステムとしての成立性を評価した研究は殆どない。まだまだやるべきことは沢山残っている。
CANSPACE Archives - October 2007
今月のCANSPACEから2つほど面白そうな話題。
(1) 9月のUTC再定義に関するITUの会合で閏秒を停止する勧告がなされたらしい。まだ最終決議された訳ではないが順調なら2013年に閏秒は停止され、UTCは連続時刻系に移行するとのこと。
(2) 10月中GPS及びMCSのバックアップ機能の試験が定期的に行われているとのこと。
(1) ソースを見てないのでなんとも言えないが連続時刻系になると1000年もすると昼夜逆転する可能性もあるのだろうか。(2)は多分9月に実施されたAEPで更新された換装システムの試験ということなのだろう。ここのところ幾つかGPSの異常動作 (?) が続いているがもしかしたらこれらが原因の可能性もある。
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SBAS-DGPS測位ルーチンの動作検証を兼ねて、少し10/8に発生したPRN19クロック異常とMSAS補正メッセージの動作を解析。
(1) NANUではPRN19の4:37-16:36の利用不能通知が出ている
(NANU2007118, 2007120)。
(2) 航法メッセージはIOD=186、TOE=6:00以降、航法メッセージは更新されていない。(TOE=8:00の更新は行われていない)
また衛星ヘルスフラグは立っていない。
(3) 日本での受信予定時間は3:00-10:30であるが実際には9:00で信号が切れている
(参照)。これは衛星から送信中断した可能性が高い。
(4) MSAS高速補正メッセージはPRCの値が6:30頃から異常に小さくなっていき、最小-35mまで行って、8:00で途切れている。ただしこの異常の間UDRE=6
(3.75m) のままであり、特に異常を示していない。なおmsg6
(integrityメッセージ) は送信されていない。
(5) MSAS長期補正メッセージはδaf0 (時計バイアス補正)の値が6:30頃から異常に小さくなっていき最小約-143mまで行って、こちらは10:40まで継続している。なおIODは186のまま。
(6) 10:00頃から異常衛星 (PRN19) 以外の時計バイアス補正値が10〜25m程度の異常値を示しだし、13:01 (PRN129)、17:06
(PRN137) まで続いている。その後PRN129は14:23まで、PRN137は18:01まで送信中断があり、中断後正常値に復帰している。(PRN129は18:00位まで異常が続いている)
(7) PRN129補正メッセージによるMSAS-DGPS解 (NovAtel GPS-702-GG+ublox AEK-4T) を示す。13:00-15:30はMSAS送信中断の影響。9:00-10:00はDOP悪化。問題は12:00以降の解の乱れ。21:00以降の誤差増大はまだ解析が間に合っていない。
さて、問題点。
まずGPS側であるが、航法メッセージ更新を行わないで保守を行っているのは問題。クロック異常が搭載原子時計障害なのか保守のためなのかはよく分からない。どうも予定保守という感じではないので障害の可能性が高いと思う。(補足: GPSの搭載時刻系(TKS)はVCXOとCs/Rb原子時計のカップリングで構成されているのだが、原子時計が故障するとVCXOのフリーランで時刻を出力し急にドリフトが大きくなる症状を起こす。今回の事象はこれに類似している。9:17追記)
次に、MSAS側であるが、まずPRN19のクロック異常を検出しintegrityメッセージか高速補正メッセージでUDREを上げて異常通知をすべきと思うがこれがなされていない。次に異常衛星以外の長期補正値
(δaf0) に異常が発生し、(多分リセットをかけるため)
送信中断するまで続いている。これは長期補正値推定フィルタの異常動作の可能性が高い。(補足: 長期補正とPRCで補正できているのだからUDREを上げる必要はないという考えもあるかもしれない。この辺は何とも言えないが今回のようなケースは利用者側でPRN19を除外出来るようにするのが、妥当な処置だと思う。また異常衛星以外の長期補正値異常も同一オフセットが載っているだけで測位解にはあまり影響を与えていない様だ。ただこれもシステム動作として正常とは言えないだろう。9:28追記)
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あまりたいしたネタではないのだが、GAGAN (PRN127) が送ってくるSBASメッセージに含まれるIGPの定義。msg0が送られているのでまだ試験運用中と考えて良い。電離層補正値を始め補正値そのものはまだまだ怪しい。
Wikipedia, Wide Area Augumentation System
最近ハワイ上空のWAAS POR PRN134の信号が受からないと思っていたら、今年7月末でSBAS信号の放送は終了したとのこと。どうもInmarsatを間借りする契約が切れたということらしい。その代わりに8月からGalaxy
XV (PRN135, 133W)、Anik F1R (PRN138, 107W)
が補正情報の放送を開始している。これら衛星は日本からは見えないので、日本で使える測位衛星が一つ減ってしまったことになる。残念。
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移動体へのMSAS補正の有効性を少し解析。5/29に取ったubloxデータをMSAS補正ONで解析。なおMSASメッセージはENRIのログを使用した。左青点がRTKLIB-MSAS-DGPS解。右青点がublox-NMEA解。緑は参照用に同時に取ったNovAtel-KGPS解(FIX解)。右のublox-NMEA解は数mの座標誤差が出ているが、MSAS解は絶対座標精度がずっと良いことが分かる。ただマルチパスを拾って結構ガタガタの雑音が載っている。付属パッチアンテナなのでこんなものか。(右はublox内部でフィルタが入っているのでスムーズに見える)。これを見ると受信機がちゃんと対応しさえすれば、結構使えるのではないかと思う。
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もうひとつMSAS補正が有効なことの確認。異なる日の屋根上NovAtelアンテナ+ublox
1Hz 34H分データ。青がRTKLIB-MSAS-DGPS解、赤がRTKLIB-単独測位解。上下RMSで3.9m→1.4mの改善。でも何度も書くようにSBASのちゃんとした実装は大変。いまのところメッセージ
1, 2-5, 6, 9, 18, 24, 25, 26のみ実装したが、7,
10, 28は無視。
ところで10/8のPRN19クロック異常後の補正メッセージはどうも変。多分これはMSASの動作異常ではないかと思うのだが、航空機安全に関わるシステムなのでちゃんと原因を解析して対策して欲しいと思う。
少し飽きてきたが、NovAtel NMEA (single) 解とNovAtel生データ(L1)+RTKLIB-MSAS-DGPS解の比較 (赤:NMEA解、青:MSAS解)。1Hz 72H分。NMEA解は2周波を使っているので電離層は効いていないはずだが軌道・時計誤差の影響が出ている。MSAS解は電離層を含め綺麗に補正できていることが分かる。RMSで東西26cm、南北38cm。これ位出れば十分満足。上方向に少しオフセットが出ているのは原因不明。電離層擾乱時や日本中心から離れた位置では精度が落ちるはずだが、この辺は他の人が評価するだろうからもういいや。(補足: 比較基準座標がアンテナ移動前のものだった→+30cm、基線解はARP位置なので位相中心オフセットを考慮する必要がある→+8cm、ということで40cmは説明できたが、まだ20cm説明できない。これは潮汐が効いているのかもしれない。10/20追記)
GPSDGPS Webshop topics
私もたまに利用しているGISupplyさんのGPS shopサイト。MSASの効果について、DGPS用受信機、ublox、SurfStar
III、MTKチップ採用受信機について評価している。結果は微妙なもので、これを見ると廉価受信機のファームウェアって結構いい加減なのだなあ、と思ってしまう。まあちゃんとしたメーカであれば、遅かれ早かれF/W更新で対応すると思うので使われている方はそれまで気長に待つのが良いだろう。
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一応動く様になったSBAS-DGPS測位プログラムによる10/9と同一観測データ(NovAtel GPS-702-GG + ublox
AEK-4T) を使った測位解。PRN19衛星クロック異常を拾ってしまって10:00前後に異常に大きな誤差(最大5000m)が入っているためRMSが悪くなっているが、ublox-NMEA解やRTKLIB-単独測位解と比較して補正が有効に働いていることが分かる。
(補足: クロック異常のせいで差が分かり難いので10/8
6:00までの解に差し替え。左: ublox-NMEA解、右:
RTKLIB-SBAS-DGPS解。一番弱いながらubloxはフィルタが入っているので高周波雑音は少し小さい。21:01追記)
ということで、10/10に「MSASの問題か受信機の問題かも良く分からない」と書いたが、やはり受信機の問題だった様だ。ただRTCA/DO229Cは複雑すぎて、プログラムも全機能を実装している訳ではない。まだいくつか修正の必要もある。多分SBAS対応と言っても、今ある一般受信機でフルスペック対応のものは少ないのではないか。従ってMSASが有効に働く受信機が普及するまでもう少し時間がかかりそうだ。
Spaceflight Now, Upgraded satellite launched for the GPS constellation, 17 Oct 2007
GPS IIR-17Mの続報が出ている。この記事によると新衛星はスロットF2のGPS
IIA-14 (PRN26/SVN26) と置き換えられる。(補足: PRN番号としては今使われていない15が割り当てられる模様。従ってPRN15/SVN55となる。10/19追記)
この後、2007/12月、2008/3月、6月、9月に計4機のGPS
IIR-MをDelta2で上げてから、2009/1月に初のGPS IIF衛星をAtlas5かDelta4で打ち上げる予定。なおGPS
IIRはロッキードマーチン社、IIFはボーイング社製である。
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Spaceflight Now
本日、日本時で夜9時半頃、Delta2によるGPS
Block IIR-M 4号機の打ち上げが予定されている。ただ天候が悪そうでもしかすると延びるかも知れない。もうすぐGLONASS-M
(多分1度に3機) も上がるし、年末にはGPS IIR-M5やGalileo試験機2号機GIOVE-Bも予定されている様で、今後まだまだ測位衛星は増える予定。
2007/10/17 12:23UTC GPS Block IIR-17M衛星、米国フロリダ州ケープカナベラルからDelta2ロケットで打ち上げ成功。これでL2Cを備えたGPS衛星が4機となった。この後、2007/12/20にBlock IIR-18M、2008年には最初のBlock IIF衛星の打ち上げが予定されている。(22:40追記)
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SBAS補正がやっとまともに動く様になってきたが結果は結構微妙。ただ言えることは長期補正、電離層補正、短期補正を全部同時に適用しないと有効性が薄いということ。多分ubloxのNMEA解はどれかの補正がうまく働いていないのではないかと思う。
単一補正が有効に働かないということは、補正情報がきちんと分離できていないということでもある。これは日本の利用者から見ればどうでも良いことではあるが、日本から離れると精度が劣化する。少し長期評価はこれから。ENRIが公開しているNovAtel形式のSBAS補正メッセージ読み込み機能も追加しなければいけない。
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ここのところ毎朝9時位にPRN127 (GAGAN) が西の地平線近くに見えることが多い。SBAS補正メッセージも送信しているのだが、中身を見てみるとMSASとずいぶん内容が異なる。例えばlong term correctionは大体同じ値になってしかるべきだがかなり値が違う。これらは精密暦と比較すると精度が見積もれるので今後やってみたい。ただSBASの場合、ローカル局のみで衛星時計・軌道をちゃんと分離するのは一般に難しいので、地域が異なると補正精度も劣化するはずである。SBASも上手く使うと面白い技術で、補正量精度があれば長基線RTKにも十分使えるのでこれも今後評価の予定。
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結局SBAS電離層補正コードは日曜中に完成せず。概ねRTCA/DO-229C通りに、ピアスポイントから周辺IGPを求めて補間するコードを書くだけで1日半はかかっている。どうもSBAS規格を考えた人は、完璧主義者なのかどうでもいい所に拘ってあえて複雑な仕様にしている様な気はする。これはもうちょっと手抜きしないと終わらない。
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まだ試験中なのでバグがあるかもしれないが、SBAS IGP (Ionospheric Grid Point) (Band0-8)とMSAS IGPマスク (赤点=有効)。これを出すのがどれだけ大変か、SBAS規格を考えた人はあまり考えていないだろう。さてもう一息。(追記: 垂直電離層遅延(L1)を入れた図に差し替えた。16:10)
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これは教えてもらったのであるが、2007/10/8 6:00GPST位からPRN19のクロック異常が発生していたらしい。ちゃんと解析してはいないのだが、10/9に示したRTKLIB解の10/8 6:00〜9:00で解が得られていない期間があるが、これが原因の可能性がある。ubloxはRAIMが入っているためかこの期間でもちゃんと解を出力しているのはさすがである。たまたま良いタイミングでMSASメッセージのログを取っていたのでMSASのintegrity機能がちゃんと働いていたかもちょっと検証してみたい。(下はIGS RapidとBroadcast clockの差分。10/8 6:30位から急に異常なドリフトが発生していることが分かる)
覚え書き。CRC-24Qの計算コード。ただしSBASメッセージ(226bits)の様に被データが8bit単位でない場合は右詰シフトの必要がある。(int=32bit)
#define POLYCRC24Q 0x1864CFBU /* 1100001100100110011111011 */ unsigned int crc24q(const unsigned char *buff, int len) { int i,j; unsigned int crc=0; for (i=0;i<len;i++) { crc^=(unsigned int)buff[i]<<16; for (j=0;j<8;j++) if ((crc<<=1)&0x1000000) crc^=POLYCRC24Q; } return crc; }
NP-TNCJ変換アダプタが届いたので屋根上アンテナとNovAtel+ubloxを繋ぐ。信号レベルが3dB落ちるのでC/N0も落ちるかと思ったが殆ど影響は無いようだ。さてこれでNovAtelとubloxをほぼ同一条件で比較できる様になった。
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今度の測地学会講演会で最も興味があるのは新GEONETルーチン解析戦略についてである。一昨年秋の測地学会で、F2解には日本列島端でITRFに対し水平2cm程度のオフセットがある、という発表をしたのだが黙殺された形になっているので、新しい戦略でどういう対応をしているかに興味がある。当然国土地理院も現行解析の問題点は把握して改良を加えていると思うのでお手並み拝見。講演会に行けないのでここで書いておくが、国土地理院にはぜひ (IGSの再解析が終わってからで良いので) 新戦略で過去全データの再解析を実施して欲しい。
NavtechGPSで注文していたGPSアンテナスプリッタ届く。これで同一アンテナからNovAtelとubloxとでデータ同時取得可能になる。送料込みで$311.9也。ちゃんとデータシートが付いているが読み方が良く分からない。TNCに変更して頼んだはずなのに危惧したとおりNコネクタ版が来た。送り返して交換するのは手間なので別途NP-TNCJ変換アダプタを発注。3個で\3,225也。
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必死にGPSシンポの原稿書き。
さて昨日の結果であるが、たまたまMSAS無効期間があったので、ublox-NMEA解におけるMSAS補正の有効性が確認できる。グラフを見てすぐわかる様に殆どMSAS-DGPS解と単独測位解は誤差の大きさや傾向に差がない。受信機の雑音やマルチパスの大きさはRTKLIB-DGPS解を見ると見積もれるが、これと比較してublox-NMEA解はノイズレベルは小さいが数時間周期の緩やかな誤差成分が残っていることが分かる。MSASでは補正項を(1)高速変動(衛星時計)、(2)電離層、(3)長期変動(衛星軌道/時計)に分解して送ってくるのだが、少なくとも(2)(3)が上手く働いていない様だ。ubloxはSBAS補正量を出力することもでき、それを見る限り全く補正が働いていない訳ではなさそうなので、今のところ原因は不明である。MSASの問題か受信機の問題かも良く分からないので今後これは解析してみたい。あとRTKLIB-KGPS解の33cmの垂直オフセットの原因も不明であり、これもチェックしてみる必要がある。
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10/7に書いたCのbit演算の件、シフト数が負または被数のビット長以上の場合、結果は不定となる (K&R A7.8, C Ref Manual 7.6.3)。ということで10/7のケースは「処理系依存」が正しい。使いこなしているつもりでも、Cも細かい仕様になるとなかなか難しい。あと、符号付数の右シフトで符号拡張するか否かも、処理系依存らしく、知らない間にportabilityのないプログラムを書いていたようだ。危ない、危ない。
GPS/GNSS Symposium 2007, 東京海洋大, November 20-27, 2007
訳あってGPSシンポでチュートリアルとは別に発表することになってしまった。RTKLIBの紹介をすることになると思うが、いったい原稿は間に合うのだろうか。ということでここ数日やっているubloxから取り出したMSASメッセージ処理ルーチンは中断。さわりだけやった感想としてはSBAS補正、特に電離層補正はとっても面倒。ちょこちょこっと書いただけではちゃんと動きそうな気がしない。
第108回日本測地学会秋季大会, ホテル浦島, 2007/11/7-9
暫定プログラムがupされている。興味のある発表も多いのだけど日帰りはとても無理だしちょっと参加は無理。予稿集だけ後で購入しよう。
ubloxのRINEX変換の試験を兼ねて、RTKLIBで解析をしてみる。
データは例によって屋根上アンテナ+ubloxで取った1Hz約41H分のデータ。ublox-NMEA解
(左上)、RTKLIB-単独測位解 (右上)、RTKLIB-DGPS解
(左下)、RTKLIB-KGPS解 (右下)。(赤:単独測位、青:DGPS、橙:FLOAT、緑:FIX)
RTKLIB-DGPSはMSAS補正DGPSではなく、近くの電子基準点とのLADGPS
(基線長6.9km)、KGPSも同様。ただしDGPS/KGPSは基準局は30秒の補間のみで高速時計変動補正は入れていない。原因不明だがNMEA解を見ると途中で5H程一時的にDGPS補正が無効になっている。これはMSASのトラブルの可能性もある。
細かく見るとなかなか面白い結果ではないだろうか。
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ublox生観測データから抽出したMSASメッセージ例。PRN MSG Type : メッセージ (250bit 16進ダンプ)。メッセージ種別はMSAS頁参照。主に高速補正、長期補正、電離層補正、電離層マスクが出力されているようだ。
パリティとしてCRC-24QというCRCを使っているのだがコードを書くのは面倒そうなのでどこかにソースが落っこちていないだろうか。
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ubloxからRXM-RAW, RXM-SFRBで出力したubxファイルのRINEX
OBS/NAV変換コマンド作成。随分測位プログラムは書いているが、初めてGPS航法メッセージのデコードを書いた。ubloxメッセージ仕様書、IS-GPS-200DやRINEX仕様書を何度もひっくり返して書く。
Cのbit演算で少し嵌る。(-1)<<32が0xFFFFFFFFとなる
(当然0x00000000になると思っていた) のだけどこれはCの仕様?、処理系依存?、あるいはgccのバグ?
ちょっと不可解な動作。ということで一応RINEX
OBS/NAVに落とせて解析できる様になった。これからSBASメッセージのデコードを書いて、SBAS補正やSBAS暦計算を書く。
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ublox覚え書き。ublox (AEK-4T) からの航法メッセージおよびSBASメッセージの取り出し方。
・u-center configuration view設定
- MSG : Message=02-11 RXM-SFRB, Target=On
- UBX-CFG-PRT ; Target=3-USB, Protocol
out=0+1 - UBX+NMEA
・以上設定でRXM-SFRBとして航法メッセージ(サブフレーム)/SBASメッセージが出力される
・RXM-SFRBフォーマット : Header(0xB5,0x62)+ID(0x02,0x11)+CHN(uchar)+SVID(uchar)+DWORD×10+Chksum(2B)
・航法メッセージは6秒間隔、SBASメッセージは1秒間隔。各メッセージ形式はIS-GPS-200DとRTCA/DO-229C参照。
・byte-orderはlittlie-endian (x86形式)。
RXM-EPHはpullでしか取り出せない様なので、航法メッセージを全部ログすることにする。
ところで、今使われているCPUでbig-endianのものってSPARC位しかないのでもうそろそろ両endian対応でプログラムを書く必要も無いような気がする。
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第2回 QZSSユーザミーティング開催報告, 2007/9/18
先月海洋大で開催されたQZSSユーザミーティングのプレゼン資料がupされている。QZSSプロジェクト状況報告とIS-QZSS
(0.1版) コメント対応が主な議題。QZSSについては色々と言いたい事があるのだが差しさわりがあるのでここには書かない。個人的には、今まであまり情報の無かった国土地理院のLEXを使ったネットワーク型RTK補正実験に興味があったのだが、何かあまり気の乗らない発表内容。言いたいことはあるのだがこれも書かない。
GPS-GDR Project, GFZ Potsdam
IGSの再解析の一環として独GFZで行われているGPS再解析プロジェクト頁。使われている解析モデルの論文リストがまとめられているので参照用に便利。今度海洋大に行った時に学内から落とすことにしよう。昨日まで精密測位の原稿を書いていたので感じるのかもしれないが、日本でも新しい解析手法をきちんとフォローする専任の解析技術者が必要なのではないか。最新論文さえ読んでいない人間が解説書いているようじゃダメだろう。
R.Dach et al. (eds.), Bernese GPS Software
Version 5.0, AIUB, January 2007 (PDF: 7.5MB)
Bernese 5.0のマニュアル正式版が公開されている。Berneseのマニュアルは以前から精密測位の解説書として大変良く書けているので、利用者ではなくても精密測位に関わる方は目を通しておく価値があると思う。Berneseも5.0からPPPやキネマティック解析の機能が追加されユーザインタフェースも整備されて使いやすくなった様だ。PPPに関してはちょっとしか触れていないのだが内容が興味深かったので引用しておく
(10.5 Precise Point Positioning)。
> PPP is a very fast and efficient means
to generate good station coordinates. Nevertheless,
> it is not possible to reach a coordinate
quality as obtained from a network analysis.
This
> is mainly due to two facts, the impossibility
to resolve phase ambiguities and the neglect
> of correlations between stations and
clock corrections. The latter needs some
further explanations:
> in a network solution all parameters
are estimated to fit all observation data
> best possible under consideration of
all correlations. This is not the case for
a PPP, where
> the influence of the stations on the
satellite clocks can not be accounted for
anymore. As
> a consequence, in particular for local
and regional networks, small modeling deficiencies
> (e.g., concerning troposphere modeling)
may be absorbed in the satellite clocks estimated
> implicitly in a double-difference solution
while this mechanism does not work for PPP.
A
> network solution is therefore the first
choice to obtain highest quality positioning
results.
書いてあることはもっともなのだが、問題はどれくらいdegradeするかということだろう。大気補正の問題もGPSだけで頑張るより数値予報モデルやGPS以外の電離層観測を取り込む方が有用な気がする。相対測位の最大の問題は当たり前だが相対解しか求まらないという点にある。この点に言及しない相対測位とPPPの比較はあまり意味が無い。(PPPも厳密に言えば軌道・時計決定に使った基準局との相対解を求めているとは言える。ただそれらがglobalにITRF等の基準座標系に拘束されている点が相対測位とは違う)
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移動体KGPS再開。
以下は自動車で同時に取った障害物の多い道路でのublox
(上) とNovAtel (下) L1信号強度の比較 (4Hz)。横軸目盛が6秒周期の航法データフレームに対応するのだが、NovAtelはアーク開始がほぼこれに同期しているので、再捕捉後half-cycle
ambiguity確定まで出力を待っている可能性が高い。これに比較しubloxは再捕捉後すぐ出力している様に見える。(逆にubloxがhalf-cycle
ambiguityをホントにちゃんと解いているかは疑問)
これを見ると受信機F/Wに手を入れたくなるなあ。
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屋根上NovAtelアンテナ+OEM-VのMSAS解の精度は、約24HのRMSでE=0.34m、N=0.52m、U=1.04mとなった。これ自体はDGPSとして妥当な精度だと思うが、NovAtelマニュアルを見ると、single pointモードでも2周波を使っている様なので、1周波受信機用の補正性能評価にはならない。やはり、ちゃんとした評価のためには自分で補正を書かないとダメだろう。RTCA/DO-229Cをせっかく買ったのでubloxから取り出したSBASメッセージ処理を実装して確かめてみたいが、いったいいつになることやら。
9末〆原稿やっと脱稿。あとは10末〆のGPSシンポ原稿。後で色々と使えるようちゃんとしたRTKやネットワークRTK解説にしたいのだが、ちゃんとした原稿は時間がかかる。どこまでできるだろう。でも、その前にまだやること多数。
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10月。9末〆原稿が終わらないのだけど、なんかやるべき事がどんどん溜まっている。まずい。
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